第2章 開幕
距離にして、数メートル先。
少し歩けば手が届く。
周りから切り取られたかのように、其れは居た。
四季「・・・きつ、ね・・・?」
きつね?「・・・・・・ようやく」
四季「、え」
きつね?「ようやく、おあいできましたね」
四季「は・・・。
え、喋・・・った・・・?」
喋った。
そう、喋っている。
この、目の前に居る・・・やけに小さな子狐らしき小動物が。
たった今、聞き間違いでなければ人語を介した。
──・・・リィ・・・ィン・・・
きつね?「ずぅっと、おまちしておりました。
あなたさまが・・・・・・おめざめになられるのを」
四季「目覚、める・・・?
え・・・何に?
(・・・あれ・・・?)」
きつね?「おめざめのときは、もうすぐです」
四季「もうすぐ・・・って言われても。
て言うか、君・・・どうして喋」
──リンッ
キキィィィィイイイイィイイィィィイイイィイッッ!!!!!!
「四季っ!!!」
一際大きくて、耳に残る鈴の音。
一際煩くて、耳を劈く(つんざく)機械的な音。
ふたつの音が混ざって。
耳を通り抜けて頭に響いた気がした。
聞き慣れた声に、名前を叫ばれながらその手を伸ばされていて。
きつね?「・・・さにわさま」
やっぱりどこか切り取られたような声が、幼くも落ち着いたようにそう言って。
全部、聞き終えた時。
私の意識は、消えた。