第2章 開幕
右だ。
方向的に右の方から聞こえる。
小さいけど、しっかり耳に届いてくる鈴の音。
神社とかにある大きな鈴でも、熊避け用の騒がしい鈴でもない。
言うなれば、そう。
風鈴の音に近いかも。
リインリインとやむ様子の無い音がどこから私だけに聞こえてくるのかが気になって、人にぶつからないようにしながら早足で。
まあ、数回軽くぶつかっちゃったけど。
すみませんと頭を軽く下げては前に進む。
こんな真っ昼間だ。酔っ払いなんて居ないし、ぶつかられた相手に怒声を上げられる事なんて無い。
──リン・・・・・・リ-ン
四季「(少しずつ大きくなってきた・・・)」
近づいてはいるだろうけど鈴の音は等間隔に規則正しく鳴り続けている。
音が少しずつ大きくなるに連れて、周りの雑音が霧散していくように少しずつ気にならなくなってきた。
近い。
その鈴の音が発している場所まで相当近づいた。
何故かは解らないけど、きっと近いはずだ。
──リィン
四季「!」
何度目かの鈴の音。
それまで小さく聞こえていたのに、しっかりとはっきりと聞き取る事が出来た。
どこ?
どこから。どこで。
この鈴は・・・なんで私だけに聞こえてくるんだろう。
四季「・・・あ・・・」
迷子になったようにキョロキョロと周囲を見回せば、それはすぐに視界に捉える事が出来た。
黒いコンクリートと、白い線が並べられた上。
ぽつんと、ひっそりと佇んでいる。