第5章 本丸
鶴丸「・・・こりゃ驚いた・・・。
確かに俺の前任は油も使わずに適当に打ち粉だけかけて終わりの手入れだった。だが・・・なんで解ったんだ?」
四季「これだけ近くで見れば解るよ。
まったく・・・日本刀ってのは繊細なんだからもっと丁寧に細かい所まで手入れしろって感じだよ。
・・・本来なら下拭い(したぬぐい)用と上拭い(あげぬぐい)用の二種類使わなきゃなのに、拭い紙(ぬぐいがみ)も一種類しか使わなかったんでしょ」
鶴丸「・・・・・・」
四季「・・・っと、ごめんごめん。手入れしなきゃだよね」
ついつい手入れの酷さにキレるとこだった。
・・・せっかくいい刀なのに、ちゃんと手入れしないとか馬鹿だろ。
いつまでも彼の前任の刀剣の扱い方について不平不満を言ってても仕方ない。
私は改めて刀剣の複数手入れをしようと意識を集中させた。
鞘を目の前に置き、依代を右手で持つ。
切っ先の峰(みね)側に左手で軽く触れた。
四季「(・・・・・・うん。やっぱり政府に居るより霊力が上手く感じ取りやすい。
これなら・・・)」
息を深く吸って、浅く吐く。
そして心を落ち着かせて、私は一言一言を丁寧に呟くように言霊を唱え始めた。