第5章 本丸
三日月と別れ、私は日付けが変わったばかりの夜明け前に審神者の部屋を訪れた。
昨日の様子を遠巻きに見ていたが、三日月達との一件から審神者はその疲れからそのまま就寝したようですね。まあ、来て早々にあれだけ動けば疲れるのも当然と言えば当然でしょうか。
だとすれば、腹は空いているはず。
私もこの人間の姿に顕現されてからと言うものの、空腹感を感じますからね。
そう思い、私は審神者の元に居た近侍らしき刀剣の姿に化けて起床した審神者に接触した。
・・・しかし、どうやら見くびり過ぎていたらしいですね。
あっさりと私の変化の術を見破るとは・・・。
美智子「だって見るからに触り心地よさそうなんだもん。動物好きにとってはそれが第一だよ。
私だったら見世物とかになんか絶対にしないね。そう言う扱い方してた審神者の人間性を疑う」
私を目の前にして他の感情は芽生えなかったのかと聞けば、審神者は迷いもせずにそう断言してきた。
・・・人間性を疑う、ですか。
自分と同じ審神者を相手に軽蔑にも似たような言葉をくちにしたものだから、私はさっき笑ったばかりだと言うのにまた笑いそうになるのをぐっと堪えた。
この審神者、他の審神者とは違う。
この娘なら或(ある)いは・・・。
姿を偽り近づき、あまつさえその命を奪おうとした私へそんな言葉をかけてくれるなんて。
そんな淡い期待心とも取れる感情が芽生えた。
・・・あれだけ憎かった人間に、まさかそんな感情を芽生えさせられようとは。