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罪と罰【終わりのセラフ】

第11章 葛藤




(アリスside)


少し時間を置いてクローリーが戻ってきた。
彼が部屋に入ると、甘美な香りが広がる。
香りの元はクローリーが持っている赤い液体が満ちたビン。


「それ、血?」

クローリー
「そうだよ」


血を取りに行ったのだからわかってはいたが、念のため確認する。
肯定しながら目の前に掲げられたその液体を見つめていると、激しい衝動に駆られていくのを実感した。


クローリー
「飲める?」

「………」


その問いに喉がなる。
飲みたい、その欲求で頭がいっぱいになっていく。
理性が飛びそうになる甘美な誘惑。


「……ダメ」


たっぷり時間をかけて出した結論。
吸血鬼としての衝動をぐっと堪えて首を振る。


「飲んだら2人に嫌われちゃう…」


飲まないと生きていけない。
でも優ちゃんとミカの事を思うとこれだけは飲めない。
でも飲まないと2人に会えないまま死ぬ。

どちらも選べずに視界が涙の膜で覆われていく。


クローリー
「………」


そんな私を見てクローリーは静かに言った。


クローリー
「このままだと鬼になってしまう、それが分かっていても飲めない?」

「……飲んだら本当に人間じゃなくなっちゃう」

クローリー
「その通りだよ。血を飲む度に自分の中にある人間性が急速に失われていく」
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