第11章 葛藤
小さい子に言い聞かせるように話すクローリー。
堪えきれずに零れ落ちた1粒の涙を拭うとクローリーはニッコリと笑った。
クローリー
「じゃあこうしよう」
そう言って彼は剣を少しだけ抜く。
「?」
何をするのか分からずに見つめると、クローリーは躊躇せずに自分の腕を刃に当てた。
「な…!何してるの!?」
刃に触れた肌が裂け、血が溢れる。
そんな行動の意味が理解出来ずに焦る私の前に、クローリーが腕を差し出した。
「え…?」
クローリー
「これなら飲めるでしょ?」
「……!」
そう言われてようやく理解する。
彼は私に自分の血を飲めと言っているのだ。
吸血鬼の血を飲めば人間の血を飲まずに生きれるのだろうか。
人間性が失われる事は無いのだろうか。
様々な疑問が頭に浮かんでくる。
クローリー
「アリスが心配している事は大丈夫だよ。ただ、人間の血と違って欲望が少ないから頻繁に飲まなきゃいけない」
クローリーは私が質問をする前に察して、そう教えてくれた。
それに吸血鬼の血だと成長が止まることもないらしい。
「…わかった」
正直吸血鬼のでも血なんて飲みたくない。
でもこれを拒否する事は私には出来なかった。
飲まないと血を流しているクローリーに申し訳ない。
意を決した私は彼の腕に手を添え、未だに血を流している患部に口をつけた。
「……ん…」
少し舐めただけで強烈な印象を残す甘美な血。
私は一瞬で引き込まれた。
少しだけ飲むつもりだったのに口が離せない。
牙を立てておもいきり吸いたい。
そんな衝動に襲われる。
クローリー
「……それだけじゃ足りないだろ。牙を立てて吸っていいよ」