第11章 葛藤
クローリー
「人間に吸血鬼の血を飲ませるんだ。すると飲んだ人間の心臓は止まり、吸血鬼となって目覚める事になる」
フェリド
「もう心臓も止まってるでしょ?」
「………」
フェリドに促され胸に手を当ててみる。
言われた通り、心臓が止まっている事が確認できた。
本当に吸血鬼になってしまったのだ。
そして吸血鬼嫌いの優ちゃんを思い、苦笑する。
もしこの先優ちゃんに会えたとしても、吸血鬼になった私は嫌われてしまうかもしれない。
それは酷く悲しい事なのに、なぜか私の目からは涙が1滴も零れない。
これも吸血鬼になってしまったからなのだろうか。
「じゃあ私はフェリドの血を飲んだんだ…」
フェリド
「何か嫌そうだね」
確認の為に聞いたのだが、心外だと言わんばかりの態度をされた。
「嫌かどうかって聞かれたらもちろん嫌。あなたがみんなを殺したんだから嬉しくはないよ」
フェリド
「そういうものかなー」
元は人間だと言ってもフェリドには一般的な感情が欠落しているのか、不思議そうな顔をしている。
本当に理解出来ていないのか、理解する気がないのか。
どちらもありえるが、どっちにしろ理解はしてくれないようだ。
クローリー
「というかフェリドくん訂正しないと」
フェリド
「何を?」
クローリー
「飲ませた血、フェリドくんのじゃないだろ」
「…違うの?」
フェリド
「うん、違うよ」