第11章 葛藤
私は怒りで震えているのかと思っていたが、クローリーのこの反応は怒っているのではない。
先程までの張り付けた笑みとは違い、自然な笑顔を浮かべている。
「……吸血鬼が笑ってる」
クローリーの反応に驚き、思わずまじまじと彼の顔を見つめた。
フェリド
「ちょっと何笑ってるの?」
クローリー
「だって子供が吸血鬼の、しかもフェリドくんにそんな態度をとるなんて…長く生きてるけど初めての光景だよ」
私の知っている吸血鬼とは傲慢で横暴でプライドが高い、そんな生物。
そのはずなのに、私の目の前でその吸血鬼が楽しそうに笑っているのだ。
戦って興奮したり、フェリドのような変態な訳でもない。
ますますクローリーという吸血鬼が分からなくなった。
クローリー
「あーこんなに笑ったの久しぶりだよ」
「!」
しばらく笑った後、クローリーがこちらに近づいてくる。
反射的に身構える私。
だが彼の表情は優しく、怯える私の前にわざわざしゃがんで目線を合わせてきた。
クローリー
「いいよ、気に入った。この子の面倒ちゃんと見てあげる」
フェリド
「そう?やる気になってくれて良かったよ」
目線はそのままにフェリドへと声をかけると、軽く私の頭を撫でてくれる。
その心地良さに目を閉じると、いつも撫でてくれていたミカの事を思い出した。
血に染まる床に横たわっていた優しい彼の事を。
「フェリド!ミカは…ミカはどうなったの!?」
フェリド
「ああ、まだ話してなかったね」