第11章 葛藤
「ちょっと!」
フェリド
「話は戻ってきてからね〜」
慌てて止めようとしたが、フェリドは立ち止まらずに立ち去った。
ニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべて。
「なんなの!?あの吸血鬼!!」
意味が分からない事だらけでパンクしそうな頭を抱え、大声で悪態をつきながら扉を叩いた。
そこで重大な事に気づく。
「開いてる…」
フェリドは鍵をかけ忘れていた。
今なら逃げられる。
でもこの部屋から出たとして、無事この屋敷から逃げられるのか。
「多分…不可能」
それは考える間もなく、答えが出た。
ここにいるのは聴覚に優れている吸血鬼。
物音を全く立てずに脱出は無理だ。
それにフェリドはお世話係を連れてくると言った。
つまりこの屋敷には最低2体吸血鬼がいるという事になる。
フェリドは私の事を殺す気は無い様だが、そのお世話係に見つかるとどうなるか分からない。
仕方ないから諦めるしかない。
ベッドに腰掛け、大人しく待つことにした。
*****
それから5分程経った頃、2人分の足音が聞こえてきた。
話をお預けされていた為、5分の時間でも長時間待たされた気がする。
フェリド
「お待たせ」
「遅い」
フェリド
「ごめんね」
初めて会った時には警戒して姿を見せることも嫌だった。
でも今は淡々と話せているから不思議だ。
そんな事を思いながらフェリドに続いて入ってくる吸血鬼を見る。
クローリー
「………」
その吸血鬼は細身のフェリドと違い、ガッシリとした体格の男だった。
作ったような笑みを顔に張り付けていて、感情が読めない。
クローリー
「ふぅ…」
じっと見ていたせいか、軽くため息をつかれた。
気分を害したのかとでも思い、フェリドの方へと目線を移す。
フェリド
「ほら、アリスちゃん逃げなかったよ」
クローリー
「鍵がかかってない事に気づいてなかっただけだと思うけど?」