第11章 葛藤
通り過ぎろ、そう祈ったが足音の主はこの部屋の前で立ち止まった。
鍵を差し込む音が聞こえ、扉から後ずさる。
そして部屋に入ってきた人物を確認して驚愕した。
フェリド
「あ、アリスちゃん起きてたんだ」
「なんで…生きて…」
入ってきたのは死んだはずのフェリド・バートリー。
驚愕し、目を見開く私に彼は笑顔で答える。
フェリド
「いやーあれくらいじゃ吸血鬼は死ねないんだよ」
「…じゃあ、わざと優ちゃんを逃がしたの?」
フェリド
「うん、そうだよ」
なんてヤツだ。
私達の命懸けの脱出劇は、この吸血鬼のただのゲームだった。
「………」
私が睨んでも、彼はニコニコと笑うだけ。
彼の考えている事が分からない。
「ねえ」
フェリド
「ん?」
「何で私は生きてるの?」
だから敢えてストレートに聞いてみた。
フェリド
「知りたい?」
「うん」
フェリド
「君を僕達の仲間にしたんだよ」
「……?」
答えるには答えてくれたが、意味が分からない。
仲間とはどういう事だろうか。
「…どういうこと?」
フェリド
「つまり……って教えてあげたいとこだけどちょっと待ってて。君のお世話係連れてこなきゃ」
「へ?」
マヌケな声が出た。
私が呆気にとられるのを楽しそうに見ている事からすると、フェリドは遊んでいるように見える。