第11章 葛藤
それを聞いて、黒髪の子は少しの間考え込む。
でも次の瞬間、彼は笑顔を見せた。
黒髪の子
「これからは1人じゃねーぞ!」
体はボロボロで酷い痛みが襲っているはず。
なのに彼は満面の笑顔を見せてくれた。
彼の笑顔は人の心を暖かくするようで、私の涙は収まっていく。
金髪の子
「ほらもう泣かないの!あんまり泣いたら君の目が真っ赤っかになっちゃうよ」
私が落ち着いてきたのを察したのか、冗談めかして笑わせようとしてくる金髪の子。
そんな彼の優しさに私の顔も泣き笑いへと変わっていた。
ミカ
「君の名前は?」
私はまだ名前を教えていない。
涙声で聞づらいだろうが、何とか自分の名前を告げた。
「…アリス」
黒髪の子
「よし!じゃあアリス!!帰るぞ!」
「…うん!」
そして私は2人の仲間の元へと帰る。
引かれる手から感じる2人の体温に、初めて安心する事が出来た。
*****
目の前が白く染まり、気がつくと私の意識は現実へと戻っていた。
「………」
先程まで見ていた幸せな記憶を思い出すように、もう一度目を閉じる。
出会った時以外の事も含め、今の私があるのは優ちゃん達のおかげだ。
だから優ちゃんを命をかけて守れたのだろう。
本当は逃げたくて逃げたくて仕方が無かった。
あれほど望んだ出口が目の前にあったのに私は助ける事を選んだ。