第8章 貴族の遊び
優一郎
「…ぃ…いやだ」
それでも首を縦に振らない。
もう逃げないと優ちゃんも殺されてしまう。
「?」
焦る私に雫が降ってきた。
それは優ちゃんの瞳から溢れていて止まりそうにない涙だ。
「優ちゃ…泣かない、で…」
優一郎
「アリス…でも…俺の家族…」
泣きじゃくり、つっかえながらも優ちゃんは私達に訴えかける。
優一郎
「やっと…やっと手に入れたのに…」
優ちゃんも百夜の子達の事を家族だと思っていたのだ。
だから最後に残ったミカを見捨てて逃げれない。
優一郎
「置いてなんかいけるか…!!」
今までは途切れ途切れだったのに、この言葉だけはハッキリと言い切った。
吸血鬼
「何だ?」
その声に反応した吸血鬼が遠くの方で姿を現す。
いよいよ逃げれる最後のチャンスだ。
ミカ
「…っ!早く行けよ!!」
ミカが最後の力を振り絞って出口へと突き飛ばす。
よろけた後、優ちゃんは少し戸惑った。
だが、ミカの最後の願いを叶えるため決意を固めたようだ。
最後に私達を見つめて、出口へと走って行った。
優ちゃんだけでも逃げれたのなら私達は犬死では無い。
先に死んでしまったみんなが報われる。
最初は自分が逃げる為に一緒に居たけれど、私はいつの間にか情が移ってしまったようだった。