第8章 貴族の遊び
ミカ
「優ちゃん…初めて家族って…」
優ちゃんの姿が見えなくなってから、ミカは安心したような顔で泣いていた。
優ちゃんは無事外へ出られたのか。
外の世界に1人で行って生きていけるのか。
心配な事は沢山あるけれど私達に出来る事はもう何もない。
後は優ちゃんの無事を祈り、この短い人生を終わらせるだけだ。
「…っ」
そう思うと、改めて死を意識した。
死ぬのが怖い。
恐怖のあまり思わずミカに手を伸ばす。
「ミカ…」
ミカ
「……大丈夫…だよ…。僕も、一緒だから…1人じゃない…」
ミカはそっと手を取ってくれた。
自分も致命傷を負っているから辛くてたまらないはずなのに、私を勇気づけてくれる。
それだけでさっきまでの怖さが嘘のように消えていた。
「ミカ…ありがと…」
ミカ
「ううん…」
ミカの笑顔を目に焼き付け、目を閉じる。
こうして私は眠るように意識を失った。
*****
11歳の私は死ぬのを怖がった。
でも人間として終わる事が出来たこの時に死んでいた方が良かったのかもしれない、と今の私は思う。
地獄の様な戦いもしなくて済んだし、辛い過去も思い出さずに済んでいた。
こんな事になるきっかけを作ったのはたった1人の女。
全ての元凶であるあの女だけは絶対に許さない。