第22章 第六のラッパ吹き
お兄ちゃんはその質問に答えずにフェリドの笑顔を横目で見る。
フェリド
「なにその目。吸いたくないの?」
クローリー
「いや吸いたいけどさ」
フェリド
「でしょ」
お兄ちゃんは私の方を一瞬だけ見てから前へと視線を戻した。
優ちゃん達の家族という事になる私に気を使ったのだろう。
フェリドはそんな事全く気にしていないが、別に私も気にならないので構わない。
本当に吸い殺したりはしないと分かっているからだ。
フェリド
「でもあんな中に入って血を飲むの我慢してるミカちゃんは偉いよねー」
クローリー
「突然我慢の限界くるからね」
顔は見えないが、お兄ちゃんはミカを憐れんでいる様だった。
でもお兄ちゃんが憐れむのも無理はない。
簡単に言うとミカは羊の中に放り込まれた狼。
だが、その狼は羊を食べる事は許されない。
「ミカ、笑ってるけど本当は苦しいよね」
クローリー
「絶対そうだと思うよ」
しかもその事に優ちゃん達は気づいていないし、ミカも気づかれない様にしている。
同じ吸血鬼だからこそ分かる辛さに、捨てたはずの心が痛んだ。
クローリー
「それで耐えられなくなったら血を飲ませてもらう。まるでペットだな」
お兄ちゃんから漏れ出た言葉。
それは私にも当てはまってしまうのだが、傍から見ればそうなるだろう。
悪気がなさそうなので反応しないでおくべきか悩む。