第22章 第六のラッパ吹き
その時、フェリドの雰囲気が変わった。
フェリド
「…はは」
「…っ」
これは殺気だ。
フェリド
「なんかお腹空いちゃった」
声のトーンはいつも通りのフェリドだが、彼が放つ殺気に体が強ばる。
スイッチが入ったフェリドの殺気にはどうしても慣れない。
フェリド
「行ってくる」
フェリドは近くにいる男の子を見ながら揺らりと立ち上がる。
クローリー
「え、フェリドくん?」
フェリド
「…皆殺しだ」
そしてあっという間にいなくなってしまった。
フェリドが飛んだ衝撃を車が受け止めた後、ようやく私は体の力を抜く。
男の子
「き、吸血鬼!?」
男
「逃げろ!!」
遠くで聞こえる叫び声に顔をしかめて視線を逸らした。
彼らは今から死んでしまう。
それを見ていたくなかった。
クローリー
「………」
「それ」
クローリー
「ん?」
前を向くと視界に入ったのは十字架のナイフを持ったお兄ちゃん。
お兄ちゃんもこれが何なのかは知らないので色んな向きから観察をしていた。
「何に使うのかな」
クローリー
「さあね。このナイフを集めるんじゃない?」
そう呟いて元の位置に戻す。
「はぁ…」
これからどうなるか分からない現状。
聞こえなくなった悲鳴に僅かに香る血の匂い。
そんな嫌な状況から気を逸らすには流れる景色を見つめるしかなかった。