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罪と罰【終わりのセラフ】

第21章 囚われの天使




そう言った時エレベーターが開いた。
冷たい夜風に当たりながら玄関へと向かう。


ミカ
「こんな世界で優しいなんて意味あるのかな?」


辺りを見渡しながら後ろを歩いている優ちゃんへと声をかけた。
返事は返ってこない。

僕の質問が夜空に消えかかった頃、優ちゃんがポツリと呟いた。


優一郎
「…名古屋って言ったっけ?」

ミカ
「うん」

優一郎
「でけぇな。グレンは金持ちだったんだなぁ」


僕の質問とはかけ離れた発言。
話を聞いていなかったのか、答えたくなかったのか。


ミカ
「…優ちゃん僕の話聞いてた?」


考えても分からないから本人に聞いてみた。


優一郎
「聞いてたよ。こんな世界だからこそ優しいって事に意味があるんだろ?」

ミカ
「全然違うよ…」


僕の質問を優ちゃんの良いように変えているから聞いていたのは本当だろう。
そして今言った言葉が先程の質問に対する優ちゃんからの答えだという事も理解した。

求めた答えとは違うが、それは仕方ない。


優一郎
「今も優しいミカに会えて良かった」

ミカ
「僕はいっつも優しいばっかりの優ちゃんに困らされてるよ」


これは子供の時からだから今更言った所で意味がないと分かっている。
それにその優しさのお陰でアリスは助かったのだから優ちゃんの優しさは今でも誰かを救っているはずだ。

だからあまり強く言えない。
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