第21章 囚われの天使
目の前にしゃがんだお兄ちゃんに全体重を預けると、そのまま気を失ってしまった。
*****
「ん…」
噎せ返るような血の匂い。
この匂いの出どころはどこなのか。
目を開けて確認しようとすると、何かに包まれていて体が動かない事に気づいた。
「…っ?」
状況が理解できないながらも動こうともがく。
フェリド
「あ、起きたみたいだね」
すると近くから聞こえたのはフェリドの声。
その声でここは安全だと判断して動くのを止める。
クローリー
「アリス、平気か?」
そして、すぐ近くからお兄ちゃんの声も聞こえて私はお兄ちゃんの腕の中にいるのだと気づいた。
その声は普段と変わらない声色だが、僅かに心配を含んでいるようだ。
「…ん、大丈夫」
申し訳ないと思いつつも心配してくれている事が嬉しくて、私を包み込んでくれているお兄ちゃんへと顔を押し付ける。
そうすると血の匂いよりもお兄ちゃん自身の匂いを強く感じる事ができた。
クローリー
「血は足りてる?」
「大丈夫…って、あれ?何で…」
その一言で思い出したが、私は血が足りなくて倒れたはずだ。
でも今では全く気にならない。
深夜の血は少ししか飲んでいないし、後は腕を切って気を失った。
渇いていないなんておかしすぎる。
フェリド
「クローリーくんの血を飲んだからもう大丈夫だよねー?」