第21章 囚われの天使
与一
「アリスちゃん…?どこ行くの?」
「…お兄ちゃんのとこ」
心配そうな与一にそう答えて、私はお兄ちゃん達を探す為に立ち去った。
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どこにいるのか分からないお兄ちゃんとフェリド。
しばらく歩き続けたが、広い屋敷のどこかで移動しているであろう2人と遭遇する確率はかなり低い。
「こうなったら…」
深夜から貰った血は少しだけだ。
このまま迷って時間切れになるのはまずい為、私は最終手段を取る事にした。
短剣を取り出し手首に当てる。
そして勢いよく切りつけた。
「…っ!」
鋭い痛みが走り、顔が歪む。
結構深めに切れたので大量に血が溢れて床が朱色に染まり、辺りに血の匂いが濃く広がった。
私の血はフェリド曰く1級品らしいから吸血鬼ならこの匂いに気づく。
この状態で血を抜くのは危険すぎるが、動き回るより効率がいいと信じての賭けだった。
「…ふぅ」
そろそろ意識を保つのも辛い。
でも必ず誰かが来ると信じて必死に意識を保っていた時だった。
「!」
僅かだが足音が聞こえてくる。
足音は2人分で、この音には聞き覚えがあった。
「お兄ちゃん…?」
クローリー
「アリス!?」
薄らと目を開けて声を出す。
するとすぐにお兄ちゃんとフェリドが現れた。
「良かった…」
2人の姿に安心し、気が抜けてしまった私。