第21章 囚われの天使
「何を…?」
深夜
「僕には甘えてよ」
「…っ」
なのに優しい彼は私の我慢を簡単に折ってしまう。
吸い殺されるかもしれないリスクがあるのを分かっているのに飲めと言ってくる彼。
そんな深夜の残酷な優しさにもう拒めなかった。
「あなたは優しくて…とても酷い人だね」
もし私が吸い殺してしまったら、優しくしてくれた彼を殺した事は永遠の罪として残るだろう。
そして償いきれないその罪を死ねない一生で背負って生きていく事になる。
だから深夜にも何か考えはあるのかもしれないが、この提案は優しくて酷い。
深夜
「ごめんね」
その謝罪は何に対してしたのか、私はその意味を考える余裕もなく彼の首へと牙を落とした。
深夜
「…っ」
牙が肌を貫通した瞬間、血の味が口内に広がっていく。
深夜は痛みが走ったのか僅かに体を跳ねさせたが、すぐに落ち着いて安心させる様に私の頭を撫でくれた。
深夜
「僕は大丈夫だから」
飲みすぎてはいけないと分かっているが、血の渇きと深夜の言葉に我慢できない。
「は…ぁ…」
それでもなんとか堪えて口を離した。
深夜
「…ん?」
首から口を離すと、少し気怠げな深夜と視線が交わる。
深夜
「もういいの?」
「…うん」
当然血は足りない。
でもこれで少しの間は持つはずだ。
ふらつく足で立ち上がり、壁を支えに歩き始める。