第21章 囚われの天使
色々あって頭から抜けていたが、私はキ・ルクに吸血されて血が抜けている状態の吸血鬼。
そんな私に人間の血の匂いは毒だった。
「私から離れて…」
意識した途端、抑えられていた血への欲求が湧き上がる。
お兄ちゃんが傍に居ないから耐えなくてはいけないのに耐えられない。
「っ…はぁ…」
胸が苦しくて、視界も歪んできた。
血への欲求から出た体の不調に耐えきれず、膝をつく。
与一
「え、どうしよう…!」
君月
「とりあえずフェリドかクローリーを探すべきだろ!」
深夜
「いや、待つんだ」
そんな私を見て慌てだした2人を深夜が止めた。
深夜
「今から探していたら間に合わない」
五士
「でも深夜様どうするつもりですか?」
この広い屋敷の中、彼らがどこへ行ったのか分かる人はいないだろう。
だから深夜の判断は正しい。
現に私も気配を探ろうとするが、全く見つけられない。
真昼の話は聞けないし、最終的にこんな事にまでなってしまった。
あの時、私は判断を誤ったのだ。
お兄ちゃんから離れずに傍にいるべきだった。
血の事でいっぱいになりそうな頭の片隅で気を紛らわそうとそんな事を考える。
鬼になってしまったら殺されてしまう。
深夜
「アリスちゃん」
「…っ?」
この状況を打開する術が思い浮かばず、困っていると名前を呼ばれた。