第21章 囚われの天使
その反応は私がまずい事を口にしたというよりは、単純に驚いている様に見える。
深夜
「…この質問には答えられない」
結局この質問に返答は得られなかった。
それでも答えが返ってこないのは想定内だったので、これ以上追求はしない。
「じゃあ次、グレンと深夜はいつ私と会ったの?」
深夜
「ああ、それなら…」
与一
「いっ!」
深夜が何か言いかけた時、突然与一が声を上げた。
「…っ」
その瞬間、あの甘美な香りが鼻腔をくすぐる。
与一を見ると彼の指からは血が流れていた。
小百合
「あ、そこの飾りで指を切っちゃったんですね…」
与一
「手が当たっちゃって…すみません…」
小百合が指差したのは武器の様な鋭利な飾り。
それに当たって指先を切ってしまったようだ。
君月
「大丈夫か?」
与一
「これくらいなら平気だよ」
確かにこれくらいの傷なら直ぐに血も止まる。
「くっ…」
だが、それよりもこちらが危ない。
与一や他の人達から距離を取るように後ずさる。
与一
「アリスちゃん?」
そんな私に気づいた与一が不思議そうにこちらへ近づこうとした。
今、彼に近づかれる訳にはいかない。
「近づかないで」
与一
「え?」
短く、冷たく言った私にみんな困惑しているのが分かる。
でもそんな彼らを気にする余裕が今の私にはない。