第21章 囚われの天使
声だけを聞くと困っているようだが、顔は全然困っていない彼は私の問いには反応せずに深夜を呼んだ。
五士
「言っちゃっていいんすかねー?」
深夜
「頼まれたのは五士だし好きにすればいいんじゃない?」
話からするとこの頼み事は五士だけが頼まれたようだが、深夜も内容は把握しているらしい。
五士
「小百合ちゃんはどう思う?」
小百合
「………」
話を振られた小百合は顎に手を当て、しばし考える。
つまり彼女も内容や誰からの頼みなのか知っているのだ。
小百合
「多分ですが…」
そして私の方を見ながら恐る恐る話し出す。
小百合
「彼女に言ってはいけないのなら五士さんにもそう伝えていると思います。何も言っていないという事は大丈夫、もしくは彼女に聞かれるのを予想していたのかもしれませんね…」
五士
「あー、なるほど」
深夜
「予想していたって有り得そうだから嫌だなぁ」
小百合の話を聞いた深夜と五士は苦笑を浮かべる。
そしてこのやり取りのお陰で私も誰が頼んだのか分かった。
深夜や五士よりも頼み事をした人は小百合との方が親しい。
更にその親しさは友情というより尊敬に近いものを感じられた。
こんな条件に当てはまる人間なんて私が知っている中では彼しかいない。
「…グレン」
小百合
「…!」
私の呟いた名前を聞いた小百合の反応。