• テキストサイズ

罪と罰【終わりのセラフ】

第21章 囚われの天使




そちらを見ると彼女はフェリドの方を向いている。


美十
「あなた達はどっちが来るの?」

フェリド
「んー?」

美十
「彼女だけを貸してはくれないでしょ?」


そう言いながら私の方を見た美十と目が合う。


「………」


無表情のまま目を逸らさずに見つめていたが、内心は微かな怒りを覚えていた。
彼女は私を貸す貸さないという表現で話を進めている。

私はフェリドやお兄ちゃんの物ではない。


フェリド
「………」


何かを感じたのか、こちらを見たフェリド。


フェリド
「これが人間だよ、アリスちゃん」

「…!」


そう静かに告げられた私は驚いて言葉が出なかった。
まるで心の中を覗かれた様な彼の発言。

見た目はほとんど同じでも吸血鬼というだけでここまで態度を変える人間達。
好きで吸血鬼になった訳では無いし、そもそもは同じ人間だったのにだ。


「………」

クローリー
「ん?」


人間とは何なのか。
そんな事を考えながら、お兄ちゃんへと視線を移す。

吸血鬼はあまり無駄な殺戮はしていない。
生きる為に人間の血が必要だから血を貰う。

もちろん人間を殺す事を楽しんでいる吸血鬼もいるが、それは人間にも人間を殺したがる者がいるから同じだ。

そう考えると吸血鬼の方がまだマシなのかもしれない。
人間の心を持ちながら吸血鬼として生きてきた私だからそう思えた。
/ 646ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp