第20章 力の制御
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フェリド
「はい、いいよー。多分声が聞こえない範囲までキ・ルクは出た」
フェリドの声を合図に全員が緊張の糸を解いた。
中には緊張から解放された事で力が抜け、座り込んだ人もいる。
三葉
「疲れた…死ぬ程緊張した…」
シノア
「一瞬で死人が出る強さでしたからね…」
それでもこの戦闘で誰も死んでいない。
キ・ルクが本気で殺そうとしなかったお陰でもあるが、奇跡と言って良いだろう。
優一郎
「死人が出なくて良かったな」
ミカ
「普通なら死んでるよ…」
キ・ルクがいなくなった事で優ちゃんの暴走状態も解かれた。
座り込んで疲れた様子の優ちゃんの横には心配そうなミカが寄り添っている。
ミカ
「心臓潰されてたけど平気なの?」
優一郎
「んー、多分平気」
ミカ
「多分じゃ困るよ…」
1番重症の優ちゃんもこの様子なら大丈夫だ。
とりあえず場の全員が無事なのを確認してから、私も警戒を解いた。
クローリー
「大丈夫、じゃないな」
「うん…結構吸われちゃった」
自分の力で座っているのも辛くなり、お兄ちゃんに寄りかかる。
キ・ルクが手加減無しで飲んだ事で血が足りない。
「抱っこしてくれたら嬉しいな」
本当に力が出ないのでせがんでみる。
クローリー
「はいはい」
するとお兄ちゃんは躊躇する事無く、片腕で抱き上げた。