第20章 力の制御
これは誰に対して言ったのか。
その言葉に反応した人を探すと、それは簡単に見つかった。
「…え」
キ・ルク
「………」
言葉に反応して動き出したのはフェリドの下半身。
首が付いている上半身ならともかく、下半身だけで勝手に動くのはおかしい。
それでも走ってフェリドの元へ向かう下半身を吸血鬼達は不思議そうな顔で見届ける。
普通とは違う異常事態だが、これでフェリドも完全に復活だ。
戦力が増えるという点ではありがたい。
キ・ルク
「これは女王様連れて退却かなぁ」
グレン
「!」
復活したフェリドを含めた私達とクルルを守りながら戦うのは流石に分が悪いと思ったのか、キ・ルクは退却を決意した。
それにグレンが分かりやすく安堵している。
フェリド
「あらら?キ・ルク様ともあろうお方がこんな雑魚相手に逃亡ですか?」
グレン
「っ!?」
フェリドはそんなグレンの気持ちを知っていてか、わざとキ・ルクを煽った。
キ・ルク
「おい、調子に乗るなよ」
この挑発に彼は乗るのだろうか。
キ・ルク
「俺が本隊に戻ったらお前は反逆者として確定だ」
フェリド
「もう拷問受けてましたけどねぇ」
キ・ルク
「次は地下深くに首だけ埋められて永久幽閉になるね」
フェリド
「それはこわーい」
緊張感のない受け答えを続けるフェリドは、この状況でも笑顔を浮かべている。