第20章 力の制御
与一
「でも僕が失敗したら…」
「与一」
与一
「!」
今まで1度も読んだ事がない与一の名を呼ぶと、弾かれたように顔を上げた。
彼の目に浮かんでいたのは焦りの色。
「大丈夫だから落ち着いて」
与一
「で、でも…」
あまり話している時間はない。
でもこのままでは失敗する可能性が高いだろう。
「確かにあなたは成功させなきゃいけない」
与一
「…っ」
「でも、失敗していいよ」
与一
「え…」
意味が分からないと言わんばかりの顔。
でも失敗してはいけないとマイナス思考の事ばかり考えるのは良くない。
「その時は私がフォローする」
与一
「………」
「それとも私じゃ頼りにならない?」
驚いて黙ってしまった与一。
だから敢えて冗談めかして言うと、与一の表情から硬さがとれる。
与一
「ありがとう…アリスちゃん」
笑顔を見せながらお礼を言った与一は再び鬼呪を構えた。
彼の目からはもう不安や焦りは感じられない。
プレッシャーに弱くても名古屋の貴族討伐に参加できる程の実力はあるのだ。
落ち着いた彼ならきっと成功するだろう。
与一
「いくよ、月光韻!!」
鬼呪装備の名前を呼び、空へ弓の様な鬼呪を向ける。
そして1度深く息を吐くと、叫んだ。
与一
「五月雨矢!!」
言葉に答える様に鬼呪装備の特殊技が発射された。