第20章 力の制御
グレン
「キ・ルクを優がやる。その為に俺達は死人が出ないように囮になる」
つまり今までの話は全部フェイントだ。
頭が切れるキ・ルクを騙す為のシナリオに過ぎない。
グレン
「クルルを救い、フェリドを救う。そう見せかけて…」
優一郎
「…俺が」
暴走する薬が入った注射器を握りしめ、呟く優ちゃん。
今回の作戦は優ちゃんに全てがかかっている。
優ちゃんは責任とプレッシャーを感じている様にも見えた。
*****
作戦開始まで後1分。
キ・ルクを狙える拷問現場から距離を取ったビルに私達は待機していた。
遠距離型の鬼呪を持つ与一と深夜がここで遠戦。
それ以外の人間とミカ、お兄ちゃんが前線に出る。
私を前線に出すかはお兄ちゃんとグレンが最後まで揉めていたが、ここで救出する為のキーとなる遠戦の2人を守る事になった。
緊急時には前線へと向かう事になる。
クローリー
「ちゃんとフード被ってなよ」
「うん、気をつける」
既に被っていたフードを更に深く被せてきたお兄ちゃん。
フードを被る理由は私だと気づかれない為だ。
遠目からなら顔さえ隠れていれば分からないはずだが、恐らく近くに行くと気づかれる。
それでも緊急時に向かった際に一瞬でも私と気づかれなかったら少しは攻撃できるはずだ。
だから限界まで深く被って顔を隠し、服も見られない様にローブをしっかりと着た。