第19章 蘇生
なかなか答えないグレンに君月は苦しそうな声で呟いた。
その声とじっと見つめてくるシノアの視線に大きくため息をつく。
グレン
「昔から俺もそれを考えてきた」
そしてシノアを一瞥して話し始めた。
グレン
「誰か黒幕がいて、そいつを倒せば楽になるんじゃないか。例えば柊家がいるから俺達は辛い想いをするんじゃないか」
シノア
「………」
自分を見てから言ったからか、家の事が出たからなのかは分からない。
シノアはグレンの事を射抜くような眼差しで見続ける。
グレン
「もっと強くなれば、もっと賢くなれば、いつか欲しいものが手に入るんじゃないか…」
鳴海
「で、強くなった結果何も得られなかったって話をするつもりですか?」
グレン
「………」
鳴海の少し強い口調にグレンは黙った。
鳴海
「鳴海家はあなたを…一瀬家を信じてここまできた。それは秀作の家もそうだ」
グレン
「ああ」
鳴海
「いつか本家の柊を倒し我らが主、一瀬家がこの不平等な世界を変えてくれると信じて…」
グレン
「鳴海」
彼の切実な思いを聞いたグレンは、鳴海の名を呼んで話を遮る。
鳴海
「はい」
名を呼ばれた鳴海は静かに返事だけを返す。
グレン
「上に行って分かった事がある」
鳴海
「なんでしょうか」
グレン
「柊は黒幕じゃなかった」