第19章 蘇生
でも優ちゃんの血を飲めるかと聞かれれば話は別だ。
「私の事は…」
クローリー
「うわー」
「………」
私の事は気にしなくていい。
そう言おうとした私の言葉はどこからか聞こえてきた声によってかき消されてしまった。
優一郎
「なんだ?」
鳴海
「敵か」
お兄ちゃんの悲鳴といっていいのか分からない程棒読みの声。
でも私以外はその声に緊張感を走らせる。
全員が警戒している中、戻ってきたお兄ちゃん。
そこには信じられない姿のお兄ちゃんがいた。
「…何してるの」
クローリー
「………」
お兄ちゃんにはいつも貼り付けている笑顔はなく、無表情。
服はボロボロで頬に傷もできている。
その姿を見て、私以外の全員が固まった。
「大丈夫?」
クローリー
「大丈夫に見える?」
「見えないから聞いてる」
クローリー
「…すっごいいじめられた」
この短時間で何があったらこうなるのか。
是非とも聞きたい所だが、とりあえず服についた汚れを払った。
優一郎
「誰にだ?」
クローリー
「いじめっ子に」
この屋敷には先程までは確かにフオラ達やクルル達がいたのは確認している。
でも今はここにいる私達以外がいる気配は無い。
「………」
念の為気配を探るが、やはり感じる事はできなかった。
「いじめっ子って誰かいるの?」