第19章 蘇生
シノア
「茜という少女が優さんの家族ならアリスさんの家族で間違いないのでは?」
地下都市で過ごした子供達の事を家族だと説明しているであろう優ちゃんの話を聞いたのなら、そう思ってもおかしくない。
それに孤児院のみんなも私の事を家族と思ってくれていたはずだ。
「…いいや」
でも私は一緒にいただけで家族ではない。
家族だとしてもあの地獄から救ってくれた優ちゃんとミカだけだ。
「私は小鳥遊 アリス。百夜の子じゃない」
だから茜には申し訳ないが、友人としての悲しみしかなかった。
なにより今これ程まで大変なこの状況、これくらいで一々動揺していられない。
シノア/三葉
「………」
私の発言を聞いてから真剣な表情で黙った2人。
この事は恐らく優ちゃんの耳にも入るだろう。
そしたら優ちゃんの事だ。
絶対にどういう事かと問い詰めてくる。
「ふぅ…」
いくら本音とはいえ、言うべきでは無かったのかもしれない。
だが後悔してももう遅い。
「先に行ってるから」
そう告げて一足先に浴室へと入った。
「………」
1人になると浮かんでくるのは茜と過ごしたワンシーン。
もしも吸血鬼になっていなかったらもっと悲しめたのだろうか。
そんな考えても仕方ない事を思いながら、入口から動く事ができなかった。