第19章 蘇生
あの時、お兄ちゃんが言った事は正論だった。
だけどあんな風に言う必要は無かったのも事実だり
なによりおかしいのは、普段のお兄ちゃんならあの言い方は絶対にしていない事にある。
シノア
「男性が女性を守ると宣言したのを邪魔する。そんな事をするのはライバル、つまり恋敵です!」
「…恋?」
シノア
「はい、クローリーさんは嫉妬しているのだと思います」
私では絶対に思いつかないであろうその理由。
シノアは真面目な顔をしている為、巫山戯ている訳では無さそうだ。
シノア
「まあ今回の場合は恋の嫉妬では無く、妹を取られたくないお兄ちゃんの嫉妬と言った所でしょうけどね」
確かに辻褄は合う。
ただあくまでも前提条件に吸血鬼には嫉妬という感情があると決めた場合だ。
三葉
「それにしてもよく分かったな」
シノア
「あはは…」
「…?」
素直に感心している三葉の言葉にシノアは何故か少し暗い顔を浮かべている。
シノア
「…恋愛が大好きな姉がいたので」
「………」
その姉という存在を私は知らない。
だからシノアが何故悲しそうなのか分からなかった。
三葉が黙っているので私も深くは追求しない。
シノア
「では入りましょうか」
三葉
「そうだな」
シノアも話したい訳では無かったようで、すぐに話を変えた。
服を脱ぎ終わったシノアが束ねていた髪を解く。