第16章 名古屋決戦
いつもは落ち着いているお兄ちゃんの吸血衝動。
それが前面に出てきた事で、耐えられない程の殺気を放っている。
優一郎
「さあ…もう1度やるぞ、吸血鬼」
周りの声も、状況も頭に入っていないらしい優ちゃんはお兄ちゃんの急変にも気づかない。
それどころか、また刀を構えてまた突っ込んだ。
「………」
このままじゃ優ちゃんは死ぬ。
でもフェリドにみんなを殺された時の無力な私とは違う。
意を決して私は飛び出した。
「優ちゃん…!」
クローリー
「おい…!」
私の行動に気づいたお兄ちゃんが我に返り、私へと手を伸ばす。
その伸ばされた手が届く前に私は優ちゃんを抱き締めた。
「うっ…」
お兄ちゃんに向かっていた刀は私に刺さり、横腹を激しい痛みが襲う。
だが、これで優ちゃんはお兄ちゃんを攻撃できない。
優一郎
「くそ!退けよ吸血鬼!!」
「…っ」
優ちゃんはもう私を認識できていなかった。
私と気づかずに刀を深く刺してくる。
「は…ぁ…」
元から鬼呪の毒に侵されていた私に限界が来るのは速かった。
血が溢れて体から失われていく為、力が入らない。
意識まで朦朧とし始めた時、先程までこの場にいなかった声が聞こえてきた。
君月
「鬼籍に入るまでの九つカウントを始めろ…鬼箱王」
逃がしてあげたはずの君月だ。
折角逃げれたのに帰ってきてしまったのか。