第16章 名古屋決戦
2人の怪我は思わず言葉を漏らしてしまう程だった。
確かに作戦通りなのかもしれないが、この怪我は想定外のはずに違いない。
グレン
「少なくとも敵の目を引いた。さあ逃げるぞ」
クローリー
「…もちろん逃がさないよ」
この2人の話を聞いていると、いつの間にかお兄ちゃん達が傍まで来ていた。
近くにいると邪魔になるだろう。
そう思って少し後ろに下がるとお兄ちゃんと目が合った。
クローリー
「………」
「………」
なぜこのタイミングでグレン達ではなくこちらを見るのか。
それはすぐに分かった。
「!」
お兄ちゃんは黙ったまま、扉の方を顎で指す。
普通なら分からないだろうが、戦術などをお兄ちゃんから教わった私には理解できた。
今回の目的は指揮官を捕らえる事だ。
でもここには指揮官だと思われるグレン以外に深夜もいる。
これだけ貴族がいるとはいえ、協力して逃げれる可能性は充分にあるだろう。
だから念のため通路で待ち伏せしてろという事だと判断する。
クローリー
「じゃ、よろしく」
「了解」
私が理解した事に気づいたお兄ちゃんはそのまま人間へと視線を移した。
視線を感じたグレンは何とか立ち上がり、再び刀を握り直す。
そしてすぐに戦闘を再開した。
金属がぶつかり合う音を聞きながら部屋を出る。
「ここかな」
少しだけ進んだ所で足を止め、壁に背を預けて待機。