第16章 名古屋決戦
フェリド
「でも優ちゃんを逃がしちゃったのは僕だからバレたら僕も処罰されちゃうけど…ってあれ?」
何かを思いついたのか、言葉を止めてわざとらしい笑みを浮かべる。
フェリド
「僕らは秘密を共有した仲間ってことじゃないの?」
クルル
「……」
フェリド
「やったー、やっと僕ら仲間になれたねー」
笑いながら距離を詰めていくフェリドにクルルは何も言わない。
その態度を見て、フェリドの表情が変わった。
いつもとは全く違う冷酷で狂気的な笑顔。
フェリド
「手を握れ。そして僕に陥落しろよクルル・ツェペシ」
冷たく言うと、フェリドはクルルに右手を差し出した。
クルル
「…っ」
クルルは目の前の手を見つめて息を呑む。
でも彼女は何も言わない、いや言えない。
フェリド
「…なんちゃって。じゃ、今日はこのへんにしておこうかな」
あのクルルが言い返す事も襲いかかってくる事もない事に満足したのか、あっさりと差し出していた手を引っ込めた。
フェリド
「次会う時は仲良くしようね〜」
そして手を振りながらそのまま出ていってしまう。
ミカ
「………」
僕は何も言う事もできずにそんな後ろ姿をただ見送った。
*****
ミカ
「クルル、さっきのはどういう事なんだ」
その後、僕はクルルを問い詰めた。