第15章 特異な存在
深夜
「その吸血鬼に逃がされたんだよ」
暮人
「どうしてお前だけを逃がしたんだ」
深夜
「さあ?気まぐれじゃないの」
あっさりと答えた深夜だが、その顔は悔しそうだ。
それにこれ以上は詳しく話しそうにない。
暮人
「じゃあ次の質問だ」
だから聞く事を変える事にした。
暮人
「その吸血鬼の片目だけの変色をお前は見たか?」
深夜
「もう知ってるんだ。さすが情報が早いなー」
暮人
「何故そうなった?」
深夜
「……」
黙り込んだ深夜は何を考えているのか。
思い出しているのか、俺に教えていいか悩んでいるのかのどちらかなのは間違いない。
深夜は教えるか黙るかのどちらを選ぶか見物だ。
そんな事を考えながら深夜の答えを待っていると、深夜が呟いた。
深夜
「多分だけど血かな」
暮人
「血だと?」
短く聞き返すと深夜は頷く。
深夜
「あの子さ。僕の血を吸ったんだよ」
深夜をよく見ると首元に手当てをした痕に気づいた。
吸血鬼から吸われたのならあれがその傷だろう。
暮人
「じゃあお前の血を吸うまでは普通の目だったんだな?」
深夜
「うん」
暮人
「…そうか」
深夜が本当の事を言っていればの話だがこれでまた新たな事実がわかった。
この様子からすると真実の気もするが、完全に信じる訳にはいかない。