第15章 特異な存在
開かれた扉から入ってくるのはいつも通りの笑顔を貼り付けた深夜。
その後ろで葵が静かに扉を閉めた。
深夜
「暮人兄さん、僕何かしたっけ?」
暮人
「現段階ではなんとも言えないな」
俺の呼び出しは深夜にとって良くない事ばかりだ。
案の定笑っているが、深夜は警戒を解かない。
暮人
「この事で呼んだんだ」
深夜
「……」
任務記録を見せる。
内容を見た深夜の目が僅かに揺れた。
彼の事をよく分かっている人間以外だと気づけない些細な反応。
それのお陰で俺の予想が確信へと変わっていく。
暮人
「その反応、話していない事実がある可能性が上がったな」
そんな俺の発言を聞いた深夜の目が鋭くなった。
バレたのなら隠す気は無いらしい。
深夜
「その任務がどうかしたの?」
それでも笑顔は崩さずに何でもない様に聞いてきた。
暮人
「単刀直入に聞く。この時お前はどうやって撤退した?」
深夜
「僕、それに書かなかったかな」
深夜が任務記録を顎で指す。
暮人
「あまりの実力差に勝ち目がないと判断。無駄死にするよりかは情報を持ち帰る方がいいと思い、隙を見て逃げた」
深夜の字で綴られた文章。
それを読み上げて深夜の顔を見た。
深夜
「そうだよ。それがどうしたの?」
意味が分からないと言いたげな深夜。