第5章 フェリド・バートリー
*****
優一郎
「おいミカ!」
フェリドと別れて無言で歩き続けていた。
しばらくすると怒りの表情を浮かべた優ちゃんが立ち止まり、ミカを睨みつける。
ミカ
「……何?」
優一郎
「お前は吸血鬼に血を飲ませてたのか!?」
流石にあの会話を聞けば鈍感な優ちゃんでも分かってしまったようだ。
優ちゃんはかなり怒っている。
でも仕方ない。
ミカは誰にも言わないでかなり危険なことをしていたのだ。
怒られて当然だと私でも思う。
ミカ
「そうだけど…何か文句ある?」
「わぁ…開き直った…」
優一郎
「な…文句って…」
ミカが平然と話しているのを見て、思わず苦笑してしまう。
優ちゃんはあっさり言われたものだから、唖然として固まっている。
ミカ
「フェリド様は吸血鬼の中でも貴族の家柄でね、血を提供したら何でも買ってくれるんだ」
「あれが貴族…」
ミカ
「そうだよ、だから美味しいものも食べられるし…」
やはりフェリドは貴族だった。
フェリドを思い出しながら呟くと、ミカは私の方を見て頷いた。
ミカ
「やっぱりここで生きていくには要領よく、頭使っていかないとね」
それまで黙っていた優ちゃん。
でもそこまで聞くと頭にきたようで、ミカの頭を思い切り殴った。