第5章 フェリド・バートリー
最後まで言う事は出来なかった。
ミカが優ちゃんの口を自分の手で素早く塞いだから。
ミカ
「彼は恥ずかしがり屋さんなのでまた今度で…」
優一郎
「むーーーーっ!!」
ミカは優ちゃんを半ば引きずるようにジリジリと後退。
そして、私の背に手を添えると背中を押してその場から離れようとしている。
「…?」
突然の行動に意味が分からない。
不思議に思いミカの顔を見るが、相変わらずニコニコ笑っているだけ。
優ちゃんは口を塞がれているから軽く暴れている。
フェリド
「そう?それはざーんねん」
あまり残念そうではない言い方。
ただその視線は私と優ちゃんを舐めるように見ていた。
怖くなり横で暴れている優ちゃんの手を思わずギュッと握るように掴む。
優一郎
「…!」
私に手を握られた瞬間ビクッと反応し、驚いたように私を見た。
優一郎
「あ…」
そこで私が怖がっているのに気がついたようで、優ちゃんは手を握り返してくれた。
優ちゃんが大人しくなった事にミカはホッとしたような表情でフェリドに向き直る。
ミカ
「フェリド様、僕達はそろそろ…」
フェリド
「じゃあまた屋敷で会おうか」
ミカ
「はい!」
ミカはフェリドに笑顔で言うと、私達を連れて足早にその場を去った。