第15章 特異な存在
目の前で立ち止まったお兄ちゃんの表情からは怒っているのか何も分からない。
何を言われるのか分からずに身を固くしていると、お兄ちゃんはしゃがんで座る私と目線を合わせる。
クローリー
「逃がした事には何も言わない。それはアリスの自由だ」
「!」
逃がした事に関して何かを言われると思っていた私は、お兄ちゃんの言葉が信じられず、思わず目を見開いていた。
クローリー
「ただ自分の立場が危なくない様にするんだ」
お兄ちゃんは怒っていたのではない。
私の身を案じていたのだ。
クローリー
「その人間が生きている事に気づかれて、拷問されたらお前が逃がした事はすぐに分かる」
「………」
クローリー
「そうなったら僕やフェリドくんは庇えない。裏切り者として永遠に拷問を受けることになるよ」
死ぬ事とは無縁な吸血鬼。
そんな吸血鬼にとっての地獄は永久拷問と聞いた事がある。
フェリド
「まあ庇う前にこんな人間を吸血鬼にしたお前が悪いって僕言われそうじゃない?」
クローリー
「そう、つまり僕達にも迷惑がかかる。今回は目の事があるから仕方ないかもしれないけど…」
確かにそれを考えると私は危険な事をしたのだと改めて思い知らされた。
自分だけならまだしも、2人を巻き込みたくない。
「でもね、言い訳じゃないけど1つ聞いてもらえる?」
ただ私にも考えはあった。