第14章 任務
赤目になるのは知っているが、片目だけが変色した吸血鬼なんて見た事はない。
これは間違いなく異常事態だ。
「…お兄ちゃんの所に行かないと」
ラクス
「え、おい!」
そう呟いて私は駆け出す。
ラクスの声は聞こえていたが、振り向かなかった。
「………」
走りながら深夜の事を思い浮かべる。
あの状況で助けたのなら放置するべきではない。
それは分かっているが、これは試したのだ。
私は深夜を殺したと言った。
貴族が言う事は絶対。
彼らが今回の事で私の実力を認めたのなら深夜の生死を確認せずに立ち去る。
逆を言えば彼らが私を信用していなければ深夜の命は保証できない。
でもあの様子なら恐らく大丈夫なはずだ。
彼らも私と同様にこの目に気が逸れている。
後は深夜に運があるかどうか。
これ以上は危険を冒してまで守る気は無い。
*****
(深夜side)
アリスちゃんが僕から手を離す時に一瞬見えた彼女の瞳。
ついさっきまでは昔と同じ綺麗な青紫だったはずが、片方だけ赤くなっていた。
その事実に僕だけでなく他の吸血鬼達も動揺している様だったからあれは想定外の事なのだろう。
急いで立ち去ったアリスちゃんに続く様に残っていた2匹の吸血鬼もすぐにいなくなった。
他に吸血鬼がいないか気配を探ったが、駅の中以外からは感じない。
深夜
「くっ…」