第14章 任務
「!」
?
「……っ!」
想定外の事態に考え込んでいたが、それはあっさり破られた。
声の方を見ると、2人はこちらの様子を伺っているようだ。
「いい、これくらい1人で平気」
敢えて素っ気なく言う。
彼らは納得したらしく、話に戻っている。
でもこれ以上時間をかける事はできない。
「あなたの名前、何?」
?
「え?柊 深夜(ひいらぎ しんや)だよ」
「深夜…」
優しい笑顔に柔らかい声で告げられた彼の名前。
どこか聞いた事があるような気もするけれど思い出せない。
「…仕方ない」
本当はまだ色々聞きたいが、2人が異変に気づく前に済ませるべきだ。
「深夜、逃がしてあげる」
深夜
「え?」
「その代わりあなたとグレンは私と再会するその時まで死なないで」
一瞬悩む素振りを見せたが、彼はすぐに頷く。
深夜
「…いいよ。でもグレンの事は覚えているの?」
「いいや」
そこまで言った所で視線を感じた。
ラクス
「………」
さすがに話す時間が長すぎたらしい。
ラクスは私を射抜く様にこちらを見ていた。
「………」
この状況では堂々とは逃せない。
寧ろ殺さないと私も立場が危うくなる。
でも深夜は逃がさなければ絶対に後悔するはずだ。
話している間隙だらけだった私。
なのに彼は殺さなかった。