第14章 任務
チェス
「アリス〜来ましたよぉ」
「…チェス」
手を振りながら現れたのはお兄ちゃんの部下であるチェス。
私と同じフェリド派閥の貴族が増えたからか、嫌な視線が減った様だ。
私はいいけどフェリドやチェスは敵に回したくない。
何とも弱者らしい思考に呆れるが、特に触れずにチェスを呼ぶ。
「なんでもない。行こ」
チェス
「はぁーい」
今回の任務についての指示はない。
つまり好きな様に動いていいのだ。
「少し…本気出そうかな」
チェス
「えーこんな任務にですかぁ?」
「うん、チェスはゆっくりしてていいよ」
毎回子供だと色々言われるのも面倒だし、この機会を利用して実力を見せるのが早い。
私の動きを見ればあの指揮官やラクス、レーネ程の吸血鬼なら実力差が分かるだろう。
「………」
そして横にいる彼女にも分からせなければいけない。
チェス
「アリス〜クローリー様もホーンもいないし退屈ですぅ〜」
「…そうだね、でも我慢して」
チェスは他の吸血鬼と違い、私の事を信頼しているように見える。
でもそれは見かけだけだ。
実際はお兄ちゃんの邪魔にならないかと見張っている。
友好的な態度をとっているのはお兄ちゃんに嫌われない為だ。
子供の時は分からなかったが、大人になった私はその事に気づけた。