第14章 任務
フェリドが任務の詳細を知らなかった為、当日まで内容は分からない。
でも人間を殺す事になるだろう。
「…っ」
止まっているはずの心臓がズキリと痛んだ気がして胸元を擦り、レイピアを取り出す。
お兄ちゃんの言う通りに細工を始めると、少しは気が紛れたようだった。
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任務当日、屋敷から出る前に私はお兄ちゃんの元へと向かった。
部屋の扉をノックして開く。
「お兄ちゃん」
椅子に座って何かを書いている背中へと声をかけると、お兄ちゃんは手を止めて振り返った。
クローリー
「ん?」
「あれ、貰っていい?」
クローリー
「ああ…」
時計を見て私が出る時間だと気づいたのだろう。
私の言葉を聞いてお兄ちゃんは机に置いていた箱を手に取る。
クローリー
「ほら、一応5日分取ってあるよ」
「ありがとう。いってくるね」
クローリー
「ああ、気をつけろよ」
時間もないのですぐに部屋を出た。
そして外へ向かいながら箱の中身を上着の内側に移していく。
全部で5本の小さなビン。
その中には毒々しい赤色の液体が揺れている。
「…全部持った」
武器にお兄ちゃんの血が5日分、必要な物は揃った。
後は覚悟を決めるだけだ。
「いってきます」
息を吸い、玄関を出て一言呟く。
その声に返事は帰ってこないが、そのまま目的地へと急いだ。