第2章 木の葉
その賑やかな木の葉の裏路地。
小さくはないが侘びた宿の帳場で自来也は宿帳に記帳していた。
「こんな宿でいいのかよ。じいちゃん金ならあるって言ってたじゃん。もっとすンげえとことってやったらいいのにさ」
隣で記帳する自来也の手元を眺めていたナルトが、への字口をする。
「字も汚えしケチだし、ホントしょーもねーエロ仙人だな!アダダダッ、い、いてェ、止めろってばよ!」
師匠に耳を引っ張られて、ナルトがジタバタした。
「やかましい。ケチってんじゃねえわ。考えがあってやっとんじゃ。いいか、ナルト。あの二人連れのことぺちゃくちゃ話して回んじゃねえぞ」
「喋んねえよ!喋んねえけど、…何で?」
「本人たちがそうして欲しくねえって言ってるんじゃ、わざわざ厭な思いさせるこたなかろうよ」
「ふーん。わかったよ」
帳場横の長椅子の二人を見て、ナルトはこっくり頷いた。肩に女を寄り掛からせた爺が、物珍しげに周囲を見回している。
ナルトの頭越しにそれを眺めやった自来也はフッと仕方なさそうに口角を下げた。
成る程、如何にも世間知らずじゃな。
適当な名前を書き終えると、無関心な様子で帳簿を繰っていた宿の男がこちらを見もせずに宿帳を下げた。
「おい、行くぞ」
部屋の鍵をナルトに渡し、長椅子に歩み寄った自来也は爺に寄りかかっていた女を抱き上げた。
「しっかし軽いの。何を食ってりゃこうスカスカになるんじゃ。つまんねえのう」
「呑まず食わずだったって言ってたじゃんか。人の話はちゃんと聞けってばよ」
ナルトに突っ込まれて自来也はしょっぱい顔をした。
「お前に言われたかないわ」
「そちらは親子なのかいな、もし?」
爺の問いに自来也とナルトが同時に振り向いた。
「ふざけんじゃねぇぞ。わしは独身貴族じゃ!」
「止めろってばよ!俺の父ちゃんはもっと男前だぞ!知らねえけど!知らねえけどこんなエロいクソジジィじゃねえ!絶対違うし!こんなんが父ちゃんなんて、俺があんまり可哀想だろ!」
「わしだってお前みたいなクソガキが自分の子なんて冗談じゃねえわ!何の罰ゲームじゃ、そんなん」
「け。振られてばっかしで子供つくってる暇もねえじゃんか。空振りばっかしの三振王!」
「なッ、わしの打率を馬鹿にすんな⁉わしゃランニングホームラン王じゃぜ⁉こまめに足で稼ぐタイプなんじゃ!」