第2章 木の葉
「何だよ、ランニングホームラン王って?ショボぉ〜」
借りた部屋の前で立ち止まった自来也にナルトが鍵を差し出す。自来也は爺に女を任せてそれを受け取った。
「ショボい⁉足で稼ぐのは女を落とす初手の初手だろうがよ!たく、これだからガキはヤなんじゃ…!」
差し込んだ鍵を回して扉を開いた瞬間、自来也は背後の爺を後ろ手に突いて低く伏せた。傍らのナルトが横っ飛びする。
「ぅ、うわッ、な、何だってばよ!何だコイツら…!!」
ナルトの声。驚いてる間に動け、コラ、ガキ!
伏せた体を通り越した太刀筋で、壁に大きな刃傷が走る。
人を襲い慣れた事もなさで、無造作に人影が飛び掛かって来た。その背後に、人影がもう一つ。何れも重たげな蛮刀を構えて隙がない。
風体と雰囲気から賞金稼ぎと思われた。玄人は玄人でも荒んだ空気を纏っている。忍びとは毛色の違う殺気が立つ。
反りの入った厚い刃を避けながら自来也は背後の二人に意識を凝らした。
退がれ、言いかけて異様な気配を感じる。
頬を掠めて生温い風が吹いた。風?風か?この質感。触れば斬れそうなおかしな風。
思わず振り返ると、女がぐらりと立ち上がっていた。
結い上げた髪の後れ毛や厚ぼったい袷の裾がひうひうと風に吹かれて揺れている。目が黒い。黒目が勝ち過ぎて目が黒炭のようだ。
その手がしなって横一線に振り抜かれた。
「おわ⁉」
ナルトの素っ頓狂な声が上がる。
ハッと目を戻せば、斬り掛かってきた男が肩口から真一文字に血を噴いていた。薄い刃物で真横に斬り払われたようなスッパリした斬り口が男の衣裳をパックリ割いている。衣裳がこうなら血を噴く傷は推して知るべし。
…何をした?
女が何かをした。それはわかる。だが何をした?
おいおい。厄介じゃのう。何だ、コイツは…
鮮やかに斬れても深い傷ではないのだろう。男は呻いたものの、血脂で滑る得物を握り直してまた構えた。後ろにいた男も前に出て並ぶ。
驚くでもないところを見れば、予想外の攻撃を受けた訳ではないのだろう。
つまり、コイツらは、女が何をしたかわかっているのだ。
右と左から、刃が挟み撃ちを掛けて自来也に打ち込まれる。
難無く避けた自来也は二の手を予測して肩透かしを食らう。
二人は自来也を迂回して女へ向かった。
傷のない方が先に出て吹き矢を咥える。