第2章 木の葉
「確かに怪しいところなら論えば切りがない。大蛇丸との失踪、先にビンゴブックに載った暁の干柿鬼鮫と傍目に不可解な繋がり。二人は付かず離れず、不定期に会ってはすぐ別れている。まるで何か目的があって繋ぎをとっているかのように見えなくもない。常に間が悪いという事もある。国境での不審な遺体の山と音の関与、磯の散開、砂への大蛇丸の侵入、そして今回の草の君主殺し。牡蠣殻が関わる一連の騒動の際に彼は洩れなく姿を現している」
「怪しいと思うなってのがおかしいデショ、それじゃ」
カカシが苦笑する。波平も肩をすくめた。
「潔白を証明するより有罪を証し立てる方が余程楽そうだな。困ったね」
「…干柿鬼鮫も同じ件で疑われてるのか?つまりその、暁が牡蠣殻さんと連るんで草の君主殺しに関わっていると?」
それまで黙っていたシカマルがしかめ面で聞いた。波平は茫洋とした目をシカマルに向けて頭を振る。
「そういう話は聞かないな。ただ牡蠣殻が為蛍を弑したと、生け捕りを条件に草がアレをビンゴブックに載せたと、それだけ。不意に湧いた話なので何とも言えないが、干柿鬼鮫と暁の関与に触れるものはありません。恐らくはこれからも触れられる事はないでしょうね。よしんば彼が何らかの形でこの問題に関わっていたとしても、何しろ草の目的は牡蠣殻の生け捕りにあるのですからね。暁などという厄介な犯罪集団に噛み付いて面倒を起こす必要などない訳です」
波平はカウンターから身を引いて、カカシ、シカマル、アスマを見渡した。
「単刀直入に言って、牡蠣殻をビンゴブックに載せたのは私の異母姉です。浮輪杏可也、砂の三代目の義妹にして砂漠の宝珠、深水の妻、荒浜杏可也かどうかは定かでないが、四月前までは杏可也の他に螺鈿と名乗り、草の深部に食い込んでいた。今も草で師殺しの荒浜海士仁と共にあり、権勢を暗びやかに握っている」
「……杏可也さんが?」
アスマがチラと目を動かした。
その先に紅がいる。紅は杏可也と仲がいい。
「本当なのか」
「私は身内を巻き込んだ下らない嘘を吐く為に木の葉に出向く程暇じゃないよ」