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連れ立って歩く 其の四 和合編 ー干柿鬼鮫ー

第2章 木の葉


「俺は牡蠣殻を知らない。だから逆に波平の言う事を鵜呑みにする訳にゃいかねえな。お前の言う通り、人は変わるんだ。根っこまで変わらねえとしても変わる。絶対にないなんて事は一つもない」

「如何にも優れた忍びらしい揺るぎなく懐疑的な見解だ、アスマ。先代がさぞお喜びになるだろう。そもそも各々心情に関わりなく任務を遂行せねばならぬのがお前達だものな。薬事を旨に前線を離れて久しい磯とは矜持が違う」

遊びのない真顔で波平は眼鏡のツルに手をかけた。

「それにこうしたニュアンスは伝え切れるものでもない。だから私はこう思うとしか言いようがないし、その発言がどう捉えられるかによって私という人間が見えもするだろう。どんな建前や前提があろうとも、潜在する意識は私を付随した評価で牡蠣殻という人間をお前達の中に刻む。情報を取り入れるとはそういう事だ。自在な取捨選択など、実はない。事の本質を探る事と気持ちは秤に載らないんだ」

口角を上げるカカシと下げるアスマを交互に見やり、波平はふむと首を捻った。

「さて、私はお前達にとって信用に足る者だろうかね。そうであってくれればいいが」

「人を試すようなものの言い方は止せよ。酒がマズくなる」

口をへの字に曲げたアスマが苦々しげに湯呑みに口をつける。

「少なくとも波平さんは信じてるんだ?牡蠣殻磯辺が草の君主殺しじゃないって」

波平の言葉には言及せず、カカシがカウンターに肘をついてシカマル越しに波平を見やった。波平は片方の眉を上げて、腹の底が見えない後輩をとくと見返す。

カカシはぶつかった目線を受け止めたまま、難しい顔をした。

「波平さんの話通りだと言うのなら、誰が何の為に彼女を嵌めようとしているかを知る必要がある。根拠の薄い話は取捨選択の対象にすらならないよ。寧ろあなたが庇いだてする事に依って彼女が庇われなきゃいけない事をした女だという印象の方が強く働いてしまう。もしくは人に嵌められるだけの事がある女だとかね。どの道いい感じは受けない。ビンゴブックに載るってのもそういう事だ。刷り込み。罪状、更には真偽さえも兎も角、決して有難くはない印象を否応なしに負うんだから。ただでさえ彼女はちょっとあまり良くない意味で特殊だしね。それを払拭したいなら、根拠が居るんだよ、波平さん」

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