第2章 木の葉
「じゃあ言うなよ。悪かったな、幸せで」
「へぇ。アスマは今幸せなんだ。いいねえ。そんな幸せならさぁ、俺にも分けて"くれない"?」
またもアスマを茶化し出したカカシに、堪り兼ねたシカマルがどんと卓を鳴らした。
「くどい!話が進まねえじゃねえかよ!おちおち飯食う気にもなれねえ!牡蠣殻さんどうしたんだよ?何でビンゴブックに載っかんなきゃねえ?何やらかしたんだ?汐田は何だって大蛇丸ンとこにいんだ?おい、アイツまでビンゴブックに載った日にゃ目も当てられねえぞ?大丈夫なのか、アンタんとこはよ、波平さん!」
「大丈夫に見えます?」
「見えねえから言ってんだ。そもそも大丈夫か大丈夫じゃねえかったら、春からもう大丈夫じゃなかったろ、アンタは」
「ああ、全くお恥ずかしい。どうも君の額や目付きが牡蠣殻を思わせるものでね。…君、前髪つくったらどうです?そうしたら私も気味の悪い勘違いをせずにすみます」
「何っでアンタの為に俺が髪型変えなきゃなんねんだよ!自分で自分を何とかしろ。自分の都合で人の髪型を変えてどうすんだ!」
「なら牡蠣殻に変えて貰うしかないですね。変えるかな。何しろ童女の頃からずっとあの髷ですから」
「……」
アスマとカカシが顔を見合わせ、シカマルはムッツリとお茶を口にした。
この男、ビンゴブックに載った牡蠣殻をまだ取り戻すつもりでいる。
「……俺は牡蠣殻ってのをよく知らないんだが」
アスマが頭を掻きながら波平に酌した。
「そんなにその女と一緒に居たいのか、お前」
「居たい。生きてさえいればと思った心に嘘はないが、アレは磯を出てこっち、死ぬようなメにばかり遭っている。この上取り返しがつかなくなる前に会って話したい。待つのは構わないが、手遅れは御免だ。因みにこれは独り言なので早々に忘れて欲しいんだが無理だろうなあ」
波平はさらりと言ってシカマルの顔を見た。
「無駄話が長くなってすまないね。しかしこれからする話と強ち無関係ではないので許して欲しい」
まだもの言いたげなアスマを置き去りにして波平は淡々と話を切り替える。
「牡蠣殻は草の君主殺しの廉でビンゴブックに載った。つい二日前の事だ」
「はぁ。為蛍を牡蠣殻さんとやらが殺したって?そりゃまた何で?」
カカシが小首を傾げる。