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連れ立って歩く 其の四 和合編 ー干柿鬼鮫ー

第15章 ならそのままで


「これ、風邪を引いてしまうぞな、もし」

声をかけられてヒナタの体がビクンと揺れる。気付かれていたのか。決まり悪さに顔が熱を持つ。

「また堂々と立ち聞きするのう」

のんびり言われ、ヒナタは俯いた。

「ご、ごめんなさい…。立ち聞きなんかして。で、でも、わざとじゃ…」

「構わん構わん。聞き耳頭巾は誰の頭にも乗っかっておるもんだわな。それより折角じゃ、朝餉を呼ばれて行くかえ?うん?」

自分のうちでもないのに朝飯に誘って、伊草がにんまり笑った。雨戸を大きく開けて、庭に下りて来る。

「聞いての通り、ひとり居候が増える。付き合いいい者じゃないかも知れんが、仲良うしてやってくれんかえ」

「…イソベ、さん?」

「牡蠣殻磯辺。性は悪くありゃせんが、どうにも逃げ癖のある奴でのう」

「逃げ癖…」

耳に痛い言葉。ヒナタは眉尻を下げた。自分も逃げ癖がある。同じだ。磯辺という相手に興味が湧いた。

「磯影が捕まえて来るつもりらしいが、うまい事いくかいなぁ…」

首を捻る伊草は優しい顔をしている。磯辺が嫌いではないんだろう。何か面白がっているようにも見えた。

「ま、わち共々よろしゅうよしなにの」

親しげに言われてヒナタは戸惑いがちに頷いた。

庭の林檎が紅い。綺麗だなとぼんやり思いながら、おかしな事になった早朝の外出をちょっと後悔する。

知らない相手とすぐ親しくなれる自分とは思えない。そういう事はいのやサクラに頼んだ方がいいのに…。

どんな人なんだろう。イソベさん…











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