第14章 磯辺に鬼鮫 ー裏ー

「あなたがどういうつもりで行為に臨んだのかはわかりました。あなたがそういう気ならば私もそのつもりで臨みましょう」

「そのつもり？どのつもりです？」

「私は保証もないのにあなたを孕ませる気はありません。今回は見逃しますが、今後あんな真似をしようとしたら問答無用で落とします」

「落と…」

「けれど今日のところは仕方がない。外に出したところで避妊は完全ではないし、実際既に中に出るものが出てしまっている。私の準備不足と先走りは否めません。一度の事でどうなるかわかりませんが、相応の心構えはしておきますよ。代価がないでもなし」

「…あー、え？代価？それはどういう…」

「今回に限り制限はないと、私はそう解釈しましたが」

「いや！とんでもない話ですね!?私の許容量を考えて下さいよ！貴方が一斗缶なら私は可く杯ですよ!?わかってます!?」

「…可く杯は穴空きですから、ある意味無尽蔵ですよ。一斗缶どころの話じゃありません」

「勢い余りました。お猪口、お猪口でお願いします」

「薬を呑みましょうか。長くなりますからね」

「それはつまり？」

「明日は寝ていなさい。まぁ私が言うまでもなくあちこち大変で寝てるしかないでしょうが」

「…言いたかありませんがね、干柿さん。私、ちょっともう早辛いんですよ、今。まさにもう今」

「知りませんよ、そんな事。自分で何とかしなさい」

「どうなんとかすりゃいんです？自分が手練だからってちょっと冷た過ぎませんか」

「ふん？手練ねえ…」

「ははは。…感じ悪いですねえ…」

「感じ良い方がいいですか？」

「……引っ掛かりませんよ？」

「また深読みする。邪推する頭があるなら空気を読むのに使いなさい」

「今上手く空気を読んだなら、あなたの思う壺でしょう？」

「この期に及んで何か問題でも？」

「だからもう早辛いと。今が今もう辛いと言ってるのに」

「だからそういうあなたを甚振るのが好きだと何度言えばわかるんです。馬鹿ですねぇ」

「そんな事何度言われたって納得いくもんじゃありませんよ。わからない人ですねぇ」

「あなたが納得する必要なんかないんですよ。要は私が納得していればいいんですから」

「ぶれないんですね…」

「ぶれませんよ」

長い腕を伸ばして二包目の薬を取り、鬼鮫は口角を上げた。